ある家のはじまりから3年後。

「その家が本当に良い家かどうか」は、お引き渡し時では分かりません。
このページでは、ある家の誕生までの過程からお引き渡し、そして3年後までの暮らしぶりを
クライアント自身が撮影されたスナップフォトとコメントでご紹介します。

計画

プレゼンテーションは運命的な出会いでした。ヒアリングの席でふんわりとしていた未来像が、こうしてEIIEからの回答として模型となると、私も妻も全神経を模型の中にミニチュア化し、玄関をくぐり、階段を登っては降り、あらゆる窓からの眺めを想像しました。他社のプランでは得られなかった高揚感でした。

最終的なファサード。雨の日でも車から玄関まで濡れずに入れます。 初回案ファサード。右側はアトリエに面した坪庭でした。 初回案の庭側。片流れの大屋根に惹かれました。 大屋根の中を覗いてみると、大階段の下は地下防音室。ダイニング横の植栽も含め完全に私の趣味に傾倒していたかも。 二階へと続く階段は当初らせん状を提案されました。 こうやって実際に家の横に降り立った目線から何度も模型を眺めていました。

建ち上がる

建築現場は当時の住まいの徒歩圏内だったので週に2回は足を運び、たびたび職人さんの仕事ぶりを確認していました。まだ壁のない木造の骨組みの中に入ると、模型でイメージしていた空間より狭く感じたり、広く感じたり、不思議な感じがしました。足場が外れ、外観が見えた時は何というか、「描いた絵を皆の前に発表する生徒のような」気持ちになりました。

子供は好奇心いっぱい。足場に登って大興奮! 大工さんお疲れ様です。 ひたすら高い吹き抜けの骨格。 下田氏による仕上がり説明。 2階からリビングを見下ろす奥さん 照明も入りまもなく竣工 棟上げの様子

はじめての日

住宅模型の中に小さくなって入るという空想が現実となったその日。いろんなドアや引き戸を開ける度、まだがらんどうな空間に響く聞き慣れない音。見に来ていた時とは違う、家とわたしたち家族がかしこまって向き合うような、妙に落ち着かない感じでした。「末永くよろしくおねがいします(パンパン)」とかよく分からない儀式をしていました。

玄関。植栽スペースの主木はカツラの樹。 庭側からの外観 土間よりリビングへ。 2Fの窓から吹き抜けを見下ろす姉妹。 例の番組を真似て「なんということでしょう」を連発。 猫さんのトイレ入口です。我が家のチャームポイントです。 アトリエ。荷物の山です。 はじめてのお泊りです。興奮してなかなか寝られないようです。 大屋根の下で空間がつながっているので、どこからでも会話ができます。

暮らす

実際に生活し始めてみると、あれこれと気づき出す。そんな時心を占めるのは、良いことより不便と感じたことの方が多いです。でも、あわてて何かを買い足したりはしないでください。足りないと感じたものが不要と思えるようになったり、使い方を工夫して解決できたり、単純に慣れてしまったり…とりあえず季節がひと巡りするまでは、ミニマムな暮らしを心がけてみる事をおすすめします。

二女画伯作品。 主庭は樹木だらけ。白樺(ジャクモンティー)やマルバノキ、ツリバナなど植えました。 造作のバスルーム。スピリチュアルモードと迷いましたが正解だったと思います。 起きている時間帯はだいたい家族みんながリビングに集います。 仕事中です。防音仕様なので集中出来ます。 あまりインテリアに凝る方ではないので、小さなニッチで空間にアクセントをつけてもらいました。 三人でもスムーズに作業できるキッチン。 ビーチバレーが本当に出来てしまう広い広い吹き抜け。 モルさんです。すぐに家が気に入ったようです。 ニッチに合わせて買った小さな花瓶。 あいまいな空間のつながり、という私たちの要望を具現化してくれました。

好きな風景

見るともなしに見やった風景が、美しい、絵になる。そんな時、本当にこの家に住んで良かったなあと思います。娘たちがちょっと先の未来でここでの暮らしを想い出した時、その風景がずっと美しく記憶されていればそれはとても幸せなことだと思うんです。

駐車場から玄関へとつながる通路はとても気に入っています。 バルコニーから見える空は、しばしばびっくりするくらい生命力にあふれる風景を見せてくれます。 リビングでドラマを観ている奥さん。 ワイヤー照明は我が家の数少ないインテリアです。 ブラインドから落ちる影が生活に色々な表情を与えてくれます。 天窓から降りてくる反射光。これも季節や天候によってバラエティ豊かに形を変えます。 白い壁面が織りなす光と影のコントラストが美しいです。 高いリビングの天井。それゆえエアコンが効きにくいというデメリットもあります。 猫は家の中でその時一番快適な場所を知っています。

ふだん着

やがて家という存在が、空気のようになっていた。あるいは眺めるべき対象から普段着のように身に着けているような感覚になった、と言う方が近いかも。こうなると家の中をうろついていた心は次第に外へと向かい、日々の暮らしがより楽しくなってきました。

引っ越して初めて雪が降りました。記念撮影を。 寝静まる頃。空間を仕切っていないので照明代もあまりかかりません。 長女さん。すくすく大きくなりました。 近所の農道。日本のこんな風景が好きです。 夏には花火を。照らし出される家がキレイでした。 最近はもう補助輪なしで乗れるようになりました。 目隠しのシマトネリコは2年で倍以上の大きさになりました。 たまにウッドデッキに野良猫さんが訪れます。ウチの猫は犬のように唸ります。 EIIEに触発されたのか、住宅模型を姉妹で作っていました。細部に至るまでよく考えられています。 年の瀬には屋根に登って天窓掃除をします。もちろん危なくないよう監視しています。

3年後

いつの間にか3年も経とうとしています。子供たちは少しずつ背を伸ばし、好きな遊びやマイブームも前とはずいぶんと変わってきたようです。煤竹色だったウォルナットの床は少し褪せて茶色っぽくなり、バスルームの窓は水垢が景色に白い模様をつけ、スイッチ周りの壁紙には手で触った跡が浮き出てきました。

バースデーケーキ。 こんな陽だまりが猫さんは大好きです。 食卓風景。 祝い事があると、しばしば飾り付けをしたりします。 ニ女さん。ポーズのバリエーションが豊か。 七五三ともうすぐ中学生。 家は歳を取ります。その歳の取り方が美しい家かどうかは大切だと私は思います。 陽だまりマニア。 駐車場に残っていた新聞配達さんの足跡。 20年後はどんな佇まいをしているのだろうか・・・

時を重ねていく

私がEIIEに望んだ一番の希望は「時が経っても美しい佇まいの家であること」でした。まだ3年間では評価も時期尚早ですが、わたしたちの暮らしぶりによって擦り切れ、染みとなってなんというか、お気に入りのセーターのように家が馴染んできたような気がしています。

to be continued...

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